こころ
2005/01/08

 ここ三日ばかり深夜零時付近に携帯電話に電話がかかってくる。

 友達は無い。知人は少ない。家族は無い。親戚も少ない。恋人はいない。仕事もほとんど無い。ひょっとしたりすると丸一日誰とも口を利いたことが無い日だって少なからずある。こんな私のところに電話がかかってくることは普段ほとんど無い。電話がかかってくるとすればテレホンアポインターからの電話ぐらいだ。テレホンアポインターの電話は最初の一言でテレホンアポインターと判断がつくのでそのまま切ってしまう。

 最初のころはセールス目的の電話だとテレホンアポインターに電話をしたことに対してなんじゃかんじゃと怒鳴りつけるように苦情を言っていたんだけども、そのあと自分の気の短さとそんなことで怒鳴るように苦情を言う自分の卑小さにで自己嫌悪に陥る気分を何度も味わっていた。テレホンアポインターに対しての過剰反応で自己嫌悪に陥ってしまうのだが、それでもテレホンアポインターだと分かるとついそんな反応をしてしまう癖がついていてつい過剰反応してしまう。
 
 そんなことを繰り返しているうちにセールス目的の電話はそのまま何も言わずに電話を下ろすことにした。何かしゃべればまだ過剰反応してしまいそうでそんな自分が煩わしのだ。それにセールスアポインターだって家族を持っている一般の人だろう。セールス電話そのものに対する過剰反応じゃあセールスアポインターだって気分もよろしくないだろう。電話を切ると折り返しコールをする者もいるがそういう時は電話機を取ってそのまましゃべりたかったら気の済むまでしゃべりなさいといって受話器を横に置いてしゃべらせておく。そうすればたいてはすぐに電話を切ってしまう。

 そんなわけでといってもどんなわけだか分かっていただけたかどうか。つまり私のところにかかってくる電話で最も多いのがセールス目的の電話だ。次に間違い電話。セールス目的でかかってくる電話番号はほぼ決まっている。間違い電話のかかってくる電話番号は完全に決まっている。そう固定電話を二台所有している。私は電話をかけるのが好きじゃないないにもかかわらず長く二台の固定電話使っており、最近では携帯電話まで持つようになった。

 携帯電話はを持つようになってからはまだ1年未満だ。その携帯電話もプリペイド式携帯電話で基本料金が必要なく定額料金を先払い登録して利用できる携帯電話だ。基本料金が必要ないとは言えども、定額料金先払いした料金の使用期限が決められているので、その定額料金分を通話として消費しない人にとってはその使用期限分の定額料金が基本料金みたいなものだ。それでも契約式の携帯電話よりはるかに維持費が安い。

 携帯電話も前から欲しいなあなんて思っているにはいたのだが、電話がかかってくることもないし電話をかける相手もいないしで、冷静かつ沈着な判断というよりは購入しても使い道が無いことが明白なので携帯電話は購入していなかった。

 携帯電話の使い道が無いから携帯電話を持たない私がなぜプリペイドとはいえ携帯電話を持っているかというと、それは昨年2月ごろに姉が入院先の病院で危篤状態になって、何らかの緊急連絡用として移動中でも連絡が取れるように携帯電話非常時電話として持ったためだ。その姉もその後半年もしないで亡くなってしまったが、2ヶ月に一度3000円の料金を先払いしつつプリペイド携帯電話は今も持っている。

 仕事でも遊びでも連絡したりされたりするようになると携帯電話というものは確かに便利なものだ。連絡をして待ち合わせをするなんてときには、公衆電話を探してうろうろするよりも携帯電話ならではのものだろう。だいいち公衆電話同士じゃお互いで先では連絡も取れやしない。

 そんな私の携帯電話にも若干の電話連絡先が登録されている。それでも私のほうから連絡をすることはほとんど無い。携帯電話を持ったころから番号非通知で電話が入っていることがごく稀にあった。携帯電話を使い慣れていないので、携帯がなっても気がつかなかったりしていることが多く着信履歴に残っているのであとで分かるだけだ。最初のころはこれが世に言う折り返し電話をさせて、その通話を情報料という名目で法外な代金を搾取するための電話なのかなと思う程度だった。しかし番号非通知じゃあ折り返し電話できっこないので、これはそうじゃないみたい。

 年が明けて5日の深夜零時過ぎ携帯電話が鳴った。番号非通知でかかってきた電話だ。番号非通知電話用の着信音を設定してあるのだ。番号非通知電話をかけてくる人を一人知っている。その人かと思って電話に出てみた。すぐに電話が切れた。そんなことがその日に30分ぐらいの間で3回あった。

 次の日も同じく電話があった。通話に出てもすぐに切れるときと少し時間を置いて切れるときがあるが相手は何も話さない。何の音もしない。この日は3−4回かかってきた。いつも寝入りばなにかかってくるので最初は私も朦朧としているが、二度三度と繰り返しかかってくるのでそのうち目が冴えてくる。

 昨日もそんな電話があった。昨日は番号非通知で電話をかける人からもその間に電話があった。同じ時間帯に電話をかけてくる人なんだけど、その人は別段いたずら電話をしなくても遠慮しないで話ができる人なので、その人じゃないだろうと思いながらもひょっとしたらその人かなあなんて思いも抱く。ほかに私にいたずら電話にしろかけてくれるような人が思い浮かばないのだ。

 なのでその人にそれとなくいたずら電話が三日続けてあって、さっきも二度ばかりかかってき寝かけていたんだけど目が覚めちゃったんだなんて話をしてみた。そうしたら、なんか悪さをしているから電話がかかってくるんじゃないのなんて言われたけど、そんな悪さをした覚えも無い。だいたいちょっとした悪ささえできるほどのくそ勇気だって持っていない小心者なんだ。

 その人と十数分の話をして電話を切った。それからしばらくして例のいたずら電話が二回あった。いずれも律儀に電話に出て声をかけるけどすぐに切られてしまった。このあとはもう寝たいので携帯電話の電源を切ってから眠ってしまった。

 私は暇人なので適当にダイヤルをしてのいたずら電話じゃ相手はしないけど、私を名指しでいたずら電話をしているのなら相手してあげるんだ。だいいちいたずら電話される覚えが無いので、相手を困らせるためのいたずら電話のようには思えないし、これって自分でそう思うだけでどっかで迷惑をかけているのかもしれないけど、電話のかかり方でそういった腹いせ電話じゃないってことは分かる。

 いちおう私は男なのでいたずら電話をかかけている相手は女じゃないかなあと思う。可能性としてはさっき話をした人だ。それ以外に思い当たるフシが無い。その人は私が悪いことをしているか誰か私のことを思っていてくれる女がいるのじゃないのなんて話をしていたけれど、最近女に手を出すなんてことをした憶えもなければ、チビで名誉も金も無くおまけに片目の男を思う女なんていないことは無いかもしれないと自分で自分を労わってはみても、そんなのが今の私にいるとはどうしても首を傾けざるを得ない。

 ひょっとしたら、その人が勘違いと思い違いで寝違えて首が痛いじゃないけれど、私に対して何らかの勘違いから思い違いをしてしまったのだろうか。そうであるならばこれは寂しいことだ。でみ、そうでないことを祈るばかりだ。今日飲みに行けば多分その人も同じ店に現れる。同じく零時過ぎまで飲んでいて携帯に例のいたずら電話がその時間帯に入らなければその疑問はより深まることになる。

Cools